一口含んで、あれ、これは違うぞ、と思った。

 あのホットミルクはもっと甘くてまろやかで、口のなかでとろけるようだった。

 どこが違うのだろう。教えてもらった通りにやったのに。牛乳の銘柄か。いいや、微々たる違いはあれど、ここまで違和感を残す事はあるまい。隠し味だと言っていた蜂蜜か。いや、ちゃんと小さいスプーンで一杯入れている。

 もう一口含んで、確かめるように舌の上で転がした。やはり、何か違う。

 そう確かめながら飲んでいたら、半分くらいしたところでぬるくなってしまった。常温になった牛乳ほど不味いものはない。一気に飲み干してカップを流しに置いて水へ漬けた。結局、あのホットミルクとの違いが何なのかわからずじまいだったが、温まった体内の眠気に負けて、今度会った時にでも聞けば良いと考えるのをやめた。

 歯ブラシ終わらせて口をすすげば、先程まで口内に広がっていたまったりとしたホットミルクの気配は無くなっている。残っているのは内側に広がる温かさだけだ。

 温もりが消えないうちに、ベッドへと潜り込む。薄い明かりを消して、布団を被ったその時、ふわり、と微かに香水の匂いが鼻を掠めた。甘い、けれど控えめで優しい、大好きな香り。

 その時あのホットミルクが美味しく感じたのは、貴方がいれてくれたからだと気がついた。
















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